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出光、超小型EVカーシェア事業化へ
出光興産は、グループの給油所を利用して、超小型電気自動車(EV)のカーシェアリングサービスを事業化する方針であることが分かりました。
首都圏を中心に急成長する国内カーシェアリング市場においては、既存の大手3社(タイムズカーシェア・カレコ・オリックスカーシェア)が圧倒的なシェアを保有しますが、ここにきて自動車メーカーの新規参入が相次いでおり、これらに加えて、ガソリンスタンド(石油会社)も新規参入を果たすことになります。
現状のカーシェアリングサービスは、カーシェアの車両を設置するカーステーションの存在が大きなポイントとなっており、時間貸し駐車場をグループ企業に持つ、タイムズカーシェア(タイムズ駐車場)やカレコ(三井グループのリパーク)が優位に事業を展開しています。
石油会社の場合には、全国各地に給油所(ガソリンスタンド)を有しており、カーステーションの問題は一定数までは確保することができそうです。
さらに、超小型EVを車両として提供するということで、既存各社とは異なるサービスを提供することができるかもしれません。
超小型EVのカーシェアリングサービス
今回の出光興産によるカーシェアリング事業参入の最大の目玉と思われるのが、提供車両が超小型EVが採用されることです。
超小型EVといえば、トヨタ自動車が大量販売に踏み切ることを発表しており、トヨタのカーシェアリングサービス「トヨタシェア」で提供されるのではと期待されています。
また、日産自動車のカーシェアリングサービス「日産e-シェアモビ」が、日産EVのリーフとノートe-power限定となっており、燃料コストがかからないことから、他車サービスと比較して料金面でのアドバンテージを持っています。
出光興産のカーシェアも、自社の給油所網を利用し、かつEV車が採用されることから利用料金面でのアドバンテージは期待されるところです。
それにしても、石油会社がガソリン車ではなく、電気自動車(EV)を採用したというのは画期的なことであると思われますが、出光興産としても、100年に1度の変革期を乗り越えていくためには、自社が変わる必要性があると考えているのかもしれませんね。
世界的な広がりを見せるEVカーシェアリングサービス
次の時代の自動車のデフォルトはEV、ということになっていますが、現実にはEVがそれほど売れているわけではなく、リーフやテスラにしてもそれほどのシェアを獲得しているわけではありません。
国内に至っては、EVどころかHV(ハイブリッド)車全盛時代という状況です。
ところが、カーシェアリングサービスにおいては、実はEV専門のカーシェアはすでに登場しています。前述の日産のカーシェア「日産e-シェアモビ」は100%EVというわけではありませんが、リーフ中心に提供されています。
また欧州ではフランスなどでEV専門のカーシェアリングサービスが登場しています。お国柄からか、最近あまり聞かなくなったCo2対策ということでしょうか、EV専門のカーシェアが急拡大しています。
実は、フランスでは2011年から官民共同のカーシェアリングサービスが大々的に実施されましたが、大金字を抱えてしまい2018年に廃止の憂き目を見ています。
このサービスの代わりとして登場したのが、EV専門のカーシェアリングサービスということになり、EV車として日本の三菱の「iMiEV」(OEMバージョン)が採用され、コスト削減を目的としてEVが組み込まれているようです。
フランスのEV専門カーシェアが今後どうなっていくのか注目されるところですが、国内では、出光興産がさらに一味異なった超小型EVによるカーシェアリングサービスを始めることになります。
出光のEVカーシェアのサービス内容は
出光では、すでに同サービスの実証実験を「オートシェア」という名称で岐阜県飛騨市と高山市で実施しており、観光客からの利用などが増えている状況です。また、来年前半には首都圏でのサービス提供に向けて千葉県館山市でも同サービスを展開する予定です。
「オートシェア」で提供されているのは、ショート料金とパック料金の2つのメニューとなります。
ショート料金は15分/350円(税込み)となり、パック料金は3時間パックが3,500円、6時間パックが6,000円となります。現状はこの3つのメニューのみというわかりやすいサービスです。
入会金や月額基本料金、また距離料金は発生しません。利用料金は自動的に最安値が設定される仕組みとなっており、支払いはクレジットカードによる1回払いのみとなります。
まだ、実験段階というところでしょうが、本格的にEV専門カーシェアリングサービスとして登場する際には、どんなサービスになっているのか注目されるところです。
国内石油需要減少対策としてのEV専用カーシェア
現在、超小型EVによるカーシェア事業には規制があり、事業化には自治体の認可が必要となっており、実施エリアが限定されることになります。
例えば、提供されるカーシェアの車両が同じEVでもリーフの場合なら岐阜県飛騨市や高山市からどこにでも行くことが可能ですが、超小型EVの場合には、飛騨市・高山市のエリア限定サービスとなります。
ただし、トヨタ自動車の超小型EV車量販体制の強化を見ても分かるように、政府は超小型EVの規制を緩和する方向に動いており、出光も緩和を受けて本格的な事業化に取り組むようです。
また、今回の出光の超小型EV専用カーシェア構想とは、迫りくる国内石油需要減少対策として、給油所の新たな収益源としての期待もあります。
出光では、国内の石油需要が人口減少や自動車の電動化、低燃費化などによって10年後には3割減、20年後には半減、30年後には7割減になると大胆に予測しています。
つまり、これからの時代給油所は石油に依存するだけでは経営は成り立たなくなります。しかし他の飲食店や商店のように簡単にやめることはできず、国民生活の重要なインフラでもある給油所網を維持するためには、新たな収益源が必要となります。
まとめ
筆者は利用したことがありませんが、最近では、ガソリンスタンドに行くと格安レンタカーのサービスが提供されていることがあります。
タイムズカーシェアを利用していると、利便性の高さと特別価格が提供されるためタイムズカーレンタルを利用することが多くなるのですが、ガソリンスタンドには給油所としての役割以外にも、レンタカー、そして今回のような超小型EVカーシェアリングサービスと、新たなサービスがどんどん登場してくるのかもしれません。
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