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ミニバンに押されて凋落したステーションワゴン人気
1989年に登場した初代レガシィツーリングワゴンを起爆剤として、日本を席巻した空前のステーションワゴンブーム。その流れを受けて、1990年代はラージクラスに日産ステージアや三菱ディアマンテワゴン&レグナム、ミドルクラスにトヨタカルディナ、日産プリメーラワゴン、ホンダアコードワゴン、マツダカペラ&アテンザワゴンなど、各メーカーが数多くのステーションワゴンをラインアップしていました。
しかし、流行はいずれ下火になるもので、1990年代半ばに差し掛かるとトヨタエスティマやホンダオデッセイ&ステップワゴンを筆頭に、大人数で乗れて広い室内空間が魅力のミニバンが台頭。その勢いに押され、ステーションワゴンの新車販売台数が次第に伸び悩むようになります。
メーカーとしては売れないクルマをいつまでもカタログモデルに据えておくはずがなく、徐々に生産を打ち切り。上記の車種で現行モデルとして残っているのは、アテンザワゴンの後継モデルであるマツダ6ワゴンくらいという状況です。
国内市場としては最盛期から大幅に縮小してしまったステーションワゴンですが、その中で健闘している車種も存在します。それを見ていきましょう。
ワゴン最後の砦と言えるカローラツーリングとレヴォーグ
国産メーカーのステーションワゴンでいまだに人気を集めているのは、トヨタカローラツーリングとスバルレヴォーグの2台です。
まずカローラツーリングは2019年の年間販売台数で1万9800台(月販平均1650台)を記録し、その80%近くがハイブリッドモデルとなります。
また、1.2リッターターボモデルには6速MTが組み合わされるなど、いまや数が少なくなったターボエンジン+3ペダルMTとして貴重な存在と言えます。
一方のレヴォーグは2020年にフルモデルチェンジを果たし、2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤーのイヤーカーを見事に受賞しました。水平対向エンジンにシンメトリカルAWDというスバルの伝統はしっかり継承しながら、シャシーからエンジンに至るまで基本コンポーネンツを全面的に見直し。
さらに、スバルが得意とする高度運転支援システムも、最新の『アイサイトX』が採用されるなど先代から大幅な進化を遂げています。
カテゴリーとしては決して盛り上がっているとは言えませんが、クルマそのものに魅力があれば今でも多くのユーザーに受け入れられる。カローラツーリングとレヴォーグは、それを証明していると言えるでしょう。
動力性能を重視しつつパワー志向のユーザーは減少
かつてカローラツーリングワゴンには165psを発揮する1.6リッターの5バルブ仕様4A-Gを搭載したBZツーリングが、レヴォーグには2リッターで300psを誇るFA20ターボを載せた2.0GT/GT-Sが用意されるなど、ステーションワゴンでありながら、速さやスポーティさを前面に押し出したグレードをラインアップ。パワー志向のユーザーにも応えていました。
それに対して現行モデルは、いずれもカタログスペックとしてはおとなしくなりました。カローラツーリングはハイブリッド車がエンジン98ps+モーター72ps、1.8リッターガソリン車が140ps、1.2リッターガソリンターボ車が116ps。
レヴォーグは全グレードとも、最高出力がFA20ターボの60%ほどに抑えられた177psの新開発1.8リッターターボに一本化されました。
その一方で最大トルクは、カローラツーリングのハイブリッド車がエンジン14.5kgm+モーター16.6kgm、1.8リッターガソリン車が17.3kgm、1.2リッターガソリンターボ車が18.9kgm、レヴォーグは30.6kgmを発揮。
いずれも低中回転域でピークを迎えるトルク特性とされた結果、ストップ&ゴーが続く街乗りや高速巡航で力強く加速し、日常域での扱いやすさも向上するなど、一般ユーザーにとっては十分な動力性能が確保されています。
ランニングコストに直結する燃費性能はどうなのか?
毎年の自動車税や、2年に一度の車検のたびに支払わなければならない自賠責保険料に自動車重量税など、クルマにはランニングコストがかかりますが、中でもユーザーが気にするのはガソリン代でしょう。それをできるだけ抑えるため、クルマ選びの際に燃費性能を重視するひとは多いと思います。
その観点からすると、カローラツーリングもレヴォーグも、まずレギュラーガソリン仕様というのが大きなポイントです。
かつてターボエンジンでは多かったハイオクガソリン仕様に対して、1リッター当たり10円前後安いというのは見逃せません。仕事やレジャーなど年間の走行距離が多いユーザーほど、レギュラーガソリン仕様であることの恩恵も大きいと言えるでしょう。
カタログ燃費は、WTLCモードでカローラツーリングのハイブリッド2WD車25.6~29.0km/L、4WD車24.4~26.8km/L、1.8リッターガソリン車14.6km/L、1.2リッターガソリンターボ車15.8km/L、レヴォーグが16.5~16.6km/Lとなります。今の時代、ハイブリッド車の燃費が20km/L台後半というのは一般的。それよりも15~16km/Lを誇るガソリンターボ車の燃費に驚かされます。
とにかく燃費重視ならカローラツーリングのハイブリッド車、走りと燃費のバランスを考えるならカローラツーリングのガソリンターボ車またはレヴォーグという選択がいいかもしれません。
クルマ選びで大きなウエイトを占める安全性能の高さ
安全装備として『トヨタセーフティセンス』を掲げるトヨタと、『アイサイト』を前面に押し出すスバル。カローラツーリングにもレヴォーグにも先進の安全装備が備わります。
まず、カローラツーリングは全グレードにミリ波レーダーと単眼カメラで構成されるプリクラッシュセーフティシステムを搭載。歩行者や自転車も認識し、万が一の際は衝突回避を支援します。
また、走行車線をキープするレーントレーシングアシストや全車速追従機能付きレーダークルーズコントロール(一部グレードは全車速非対応)、オートマチックハイビームなども採用。メーカーオプションとして死角を減らすブラインドスポットモニターや、リヤクロストラフィックオートブレーキなども用意されます。
一方のレヴォーグは、プリクラッシュブレーキ&ステアリングやAT前後誤発進抑制制御、全車速追従機能付きクルーズコントロール、車線逸脱抑制&警報などのアイサイトコアテクノロジーを軸として、GT、GT-H、STIスポーツの各モデルに用意されるEXグレードには最新のアイサイトXテクノロジーが搭載されます。
これは渋滞時のハンズオフアシストや発進アシスト、アクティブレーンチェンジアシスト、カーブ前&料金所前速度制御など一段と高度な運転支援システムが採用され、安全性を一層高めると同時にドライバーの負担を軽減します。
安全装備に関してはカローラツーリングでも必要にして十分ですが、機能性や先進性まで考えるとレヴォーグの方が一枚上手。それだけに安心感もより高いと言えるでしょう。
大半のユーザーにはコストパフォーマンスが決め手
動力性能や安全性能など、クルマを購入する際に比較検討する項目はいくつもありますが、その中でも大きな決め手になるのが「装備内容に見合った車両価格であるかどうか?」ということだと思います。そこで2台の車両価格帯(税込)を見てみましょう。
まずカローラツーリングはハイブリッド2WD車が240万3500円~275万円、同4WD車が260万1500円~294万8000円、1.8リッターガソリン車が193万6000円~231万5500円、1.2リッターガソリンターボ車が242万4400円。最も安いグレードが200万円以下で、上も300万円を切っている車両価格は庶民の味方、カローラならではです。
しかも、250万円あればハイブリッド、1.8リッターガソリン、1.2リッターガソリンターボと選択肢が広がり、ユーザーの好みや使い方に合わせてベストな1台を探せる隙のないラインアップが、いかにもトヨタらしいところです。カローラツーリングの購入を考えているひとは、「他社のクルマとではなく、カローラツーリングの中でどれにするか?」で悩むでしょう。
それに対してレヴォーグはベーシックグレードGTが310万2000円、中間グレードGT-Hが332万2000円、最上級グレードSTIスポーツが370万7000円と価格帯が上がります。全車1.8リッターターボエンジンにフルタイムAWDを備え、車格そのものがカローラツーリングよりも上なので300万円台にも納得です。
さらに、各グレードともアイサイトX標準装備のEXを選ぶと車両価格が38万5000円アップ。価格帯は348万7000円~409万2000円になります。安全運転支援システムとしては国産車でトップクラスのアイサイトXだけに、400万円を超えるSTIスポーツEXでも価格的には妥当と言えるでしょう。
動力性能や装備内容と車両価格のバランス、つまりコストパフォーマンスに関してはカローラツーリングもレヴォーグも甲乙つけがたいというのが本音です。が絶対的な価格帯は、レヴォーグの方が高いということでは、カローラツーリングの方が安いとは言えますが…
あとは懐具合と相談して決めればいいと思いますし、どちらを選んでも満足度が高いことは間違いありません。