業績好調のレンタカー業界
100年に1度の大変革期がやってきたと、自動車業界では、あたかも江戸時代の「黒船来襲」を彷彿させるような大騒ぎ(?)となっていますが、国内自動車メーカーの業績は日本初の30兆円企業となったトヨタ自動車をはじめとして、おおむね好調のようです。
それでは自動車メーカーの業績は好調でも周辺産業の業績はどうなのでしょうか?気になるのは、カーシェアやライドシェアの登場で、もはや斜陽産業のイメージすらあるレンタカー業界です。
ところが、実は、国内レンタカー会社もおおむね好調な業績となっていました。
このグラフは、レンタカーの車種別車両台数の推移(昭和59年から平成30年)ですが、乗用車(赤い棒グラフ)をはじめとして、右肩上がりで成長しており、特に、平成24年あたりから急激に増えています。
平成30年で、私たちが通常利用する乗用車のレンタカーの台数は69万8943台となっており、全体で見ても20年前の約2.4倍、10年前の約1.7倍に増加しています。
これが意味するところは、間違いなくレンタカーの需要が増加しているということです。
では、業績のほうはどうでしょうか?大手レンタカー会社のニッポンレンタカーの業績は以下のようになっています。
ニッポンレンタカーのレンタカー部門の売り上げも順調に増加しており、2016年~2018年でみると2年連続で約40憶円前後の売り上げ増となっており、非常に好調であるといえるでしょう。
これは、レンタカー業界全体についていえることで、その大きな要因とみられるのが、増加する海外観光客によるレンタカーの利用です。つまり、この勢いは当面継続することが予想されています。
レンタカー業界にとってはの「黒船来襲!」とは、海外からの観光客のことだったのかもしれませんね。
レンタカー業界はカーシェアに侵食されていなかった
レンタカー業界の業績って、なかなか表には出ていません。国土交通省のホームページでも、車両台数については平成30年度までの数字が掲載されていますが、業界全体の業績については平成25年までしか出ていません。もちろん、平成25年までは車両台数の増加を見ればわかりますが、業績も右肩上がりで上昇しています。
国内では、カーシェアリングサービス市場が急成長しており、加えて、個人間カーシェアへ参入する企業もできており、レンタカー各社は苦戦しているのではと考えていたのですが、苦戦どころか絶好調という状況でした。
こうしてみると、短時間利用に最大のメリットがあるカーシェアリングサービスとレンタカー利用のユーザーは、思ったほど被っていない、あるいは、うまいこと使い分けているのかもしれません。
進化するレンタカーはカーシェア化へ
レンタカー業界も実は好業績というのは分かりましたが、同じく好業績を維持する自動車メーカーは、100年に1度の変革期として強い危機感の下、自動車メーカーからの脱皮を図ろうとしています。これに対して、レンタカー業界は旧態依然としたサービス内容でよいと考えているのでしょうか?
その答えとなりそうなのが、ニッポンレンタカーが2019年7月より試験的に開始しているセルフレンタカーサービスです。
このサービスでは、これまでのレンタカーの問題点として指摘されていた対面方式の受付が必要なくなり、アプリで予約し、鍵の開閉もアプリで行えるため、営業所に立ち寄ることなくスムーズな出発・返却を可能としました。
言うまでもなく、カーシェアリングサービスの大きなメリットである無人受付と同じサービスで、このセルフレンタカーサービスとは、よりカーシェア化したサービスといえるでしょう。
同社では、24時間利用可能なセルフレンタカーサービスを2019年内に1500台まで増車する予定としており、レンタカーユーザーにとっては非常に便利なサービスが提供されることになります。
共生するカーシェアとレンタカー
国内におけるカーシェアリングサービスの急速な発展は、そのあまりに利便性の高いサービスのために、短時間だけではなく長時間サービスのニーズも出ていました。また、個人間カーシェアの登場は、レンタカー業界にとっては、驚異的な新しいサービスであったはずだと思われます。
ところが、蓋を開けてみると、カーシェアリングサービスのユーザーとレンタカーのユーザーはそれほど被っておらず、また、個人間カーシェアに至っては、期待されたほど伸びていないというのが実情です。
急成長しているカーシェアリングサービスについては、短時間利用に最大のメリットがあり、利用者の大半が短時間での利用となっています。また、個人間カーシェアについても、高級車をレンタカーより安く利用できるという点では、一定のニーズを掘り起こしています。
ただし、これらは、どちらかというと、これまでレンタカー業界が手を付けてこなかった部分であり、二ッチ(すき間)部分であったと考えることもできそうです。
今後は、カーシェアとレンタカーのいいとこどりをしたようなサービスが増えていくのではないでしょうか。
個人間カーシェアはどうなるのか
BtoC型のカーシェア(タイムズカーシェアやカレコが提供するカーシェア)同様に、急速な成長が期待されていたCtoC型のカーシェア(個人間カーシェア)には、Anyca、GO2GO、dカーシェアなどがあります。
個人間カーシェアのマーケットが拡大すると、サービス内容が被るレンタカー業界がダメージを受けるのでは考えられていましたが、現状では、個人間カーシェアは思ったほどの伸びを見せておらず、レンタカー業界の右肩上がりの業績は続いています。
CtoC型カーシェアの海外の状況を見てみると、国内同様に期待されたほどは大きく伸びていません。ただし、海外の場合には国内とは少しばかり事情が異なり、ライドシェアが異常なほどの伸びを見せているために、これと比較するとおとなしいというところです。
国内の個人間カーシェアは、成長を続けるBtoC型のカーシェア、好調を持続するレンタカー業界、またレンタカーのカーシェア化などを横目に、未だ黎明期の段階を超えられないというところです。
UberEatsの出現など、ライドシェアサービスも法規制次第では急拡大する可能性もあり、予断を許さない状況は続くことになります。
国内の個人間カーシェアがマーケットを拡大させるためには、バーチャルキーなどを活用したクルマの受け渡しの簡素化など、ユーザーがもっと利用しやすくなるような環境整備が必要なのかもしれません。
Anycaが提供する「0円マイカー」などの新しいサービスに期待したいところです。
まとめ
100年に1度の変革期を迎えているモビリティ産業は、この産業自体が衰退していくのではなく、さらに成長していく過渡期に差し掛かっているのかもしれません。
カーシェアや個人間カーシェア、ライドシェアの誕生は、レンタカー業界にとっては非常に厳しい現実だと考えられていましたが、蓋を開けてみると、海外特需があるとはいえ、レンタカー業界は絶好調ともいえる状況です。
今後は、レンタカーのカーシェア化が進むと思われますが、取り残された感のある個人間カーシェアは、これまでとは異なるような日本型のCtoC型のカーシェアを提供できるのかがポイントとなりそうです。
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