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個人間カーシェアが日本では受け入れられないのは何故?
2018年には、ユーザー数130万人以上となった急拡大する日本のカーシェア市場ですが、国内のみならず世界的にもカーシェアリングサービスは急成長を遂げています。
一般的には、カーシェアのサービスには2つのタイプがあり、一つは、日本でも急成長しているタイムズカープラスなどのカーシェア事業者が提供するサービス、もう一つがP2P型の個人間カーシェアでクルマを所有する個人が借りたい人に貸し出すサービスです。
カーシェアが始まったのは、1987年のスイスがはじめてで、次いでドイツでサービスが始まります。1997年スイス政府がエネルギー対策としてカーシェアを公共交通機関としたこともあり、2016年の調査では人口全体の1.31%という高い普及率を誇ります。
欧州一の自動車大国であり、循環型持続社会への意識も高いドイツでも急成長しどう普及率は1.2%とスイスに迫る勢いです。
そんな中で日本のカーシェアリングサービスは、コインパーキングを利用するという特殊な展開となりましたが、ユーザーの意識としては、エネルギー対策といよりは、自宅近くのコインパーキングに設置されたカーシェアをPCやスマホから簡単に予約でき、安価で質の高いサービスが受けられるということから急成長していると思われます。
このようなことから、日本では、事業者が提供する利便性の高いサービスが好まれる傾向が非常に高く、鳴り物入りで登場したP2P型の個人間カーシェアは伸び悩んでいるという状況です。
2/28に個人間カーシェアサービスAnycaを運営するDeNAが、SOMPOホールディングスとの会社「DeNA SOMPO Mobility」を設立し、Anycaを移すとの発表があり増したが、日本で、P2P型の個人間カーシェアが伸び悩んでいる日本的ともいえる理由について考察してみました。
欧米との文化の違い~物を大切にする日本人~
よく指摘されることですが、同じクルマ社会とは言っても、欧米と日本では大きな違いがります。
欧米では、クルマのバンパーがぶつかるのが当たり前であり、狭い駐車スペースに駐車する際などではバンパーでぶつけられてもそれほど気にしない傾向があります。
バンパーとは、訳すと「衝撃バー」という意味であり、駐車スペースを確保するためにバンパーで軽く押すのは常識であり、そのために駐車するクルマもサイドブレーキを引いていないケースがほとんどです。
日本なら、バンパーの小さな傷でさえ事故扱いとなりそうですが、そもそも時間貸し駐車場が多くなく路駐が当たり前の欧米では、バンパーでぶつけるくらいは常識的なものなのです。
このような文化の違い、意識の違いがありますので、個人間カーシェアに対する考え方も大きく異なります。日本人のオーナーなら、バンパーに傷をつけられると大変なことになってしまいますよね!
対面方式が馴染まない
タイムズカープラスなどの事業者によるカーシェアリングサービスが急成長する要因の一つに、クルマを利用する際にはレンタカーのように対面方式で契約する必要はなく、スマホやPCで簡単に予約して、予約時間に無人のカーステーションに出向いて利用するだけという利便性の高さが指摘されています。
カーシェアリングの大きな特徴が、無人方式でカードやスマホをステッカーにかざすだけで利用できるというポイントにあるわけです。
この点、P2P型のカーシェアの場合には、オーナーさんと都度顔を合わせて傷のチェックなどを入念に行う必要があり、これを面倒だと思う人には敬遠されることになります。
傷つけた時に気まずい
これも日本人ならではの習慣でしょう。個人間カーシェアの場合には、傷をつけた場合には、たとえそれがバンパーであっても傷をつけたら交換もしくは修理するのが当たり前ですから、オーナーさんに返却する場合には非常に気まずい思いをすることになります。
タイムズカープラスなどの事業者が提供するカーシェアの場合には、個人のクルマを借りているというよりは、企業のサービスを利用しているという意識が強いでしょうから、そこまで気まずい思いをする必要はありません。NOC保険に加入していればなおさらです。
自動車保険に対応範囲外がある
事業者によるカーシェアのメリットの一つに、利用料金に自動車保険料も含まれており、さらに300円強のNOC補償もオプションで提供されているというポイントがあります。
つまり、タイムズカープラスやカレコの場合には、NOC補償まで加入すれば、万が一の際にも安心してクルマを利用することができるということになります。
これに対して、個人間カーシェアの自動車保険は少しばかり内容が異なり、正直なところ、タイムズカープラスやカレコほどの安心感がないというのが現状です。
個人間カーシェアのAnycaの場合、利用毎に東京海上日動火災保険の1日保険への加入が必須となります。料金は、1,800円/日(複数のドライバーの場合には2,700円/日)となり、レンタカーと同程度の保険料となります。
問題なのは、借用自動車の復旧費用保障特約で、免責額が10万円、最高限度が300万円となっている点です。免責額10万円とは、1事故について10万円までの自己負担額が発生するということです。
また、最高限度300万円とは、最高でも300万円までしか保証されないということで、個人間カーシェアのメリットといわれる高級輸入車や希少車を借りた場合には全額賄えない可能性もあるということになります。
マイカーへの愛着
これも文化や習慣の問題になりますが、日本人は物を大事にする民族ですので、マイカー所有者の中には非常にクルマに愛着も持っているオーナーも当然多くいます。まさに針供養の世界ですね。
そんなオーナーさんが、高額の維持費の足しにでもなればと始めたようなケースの個人間カーシェアの場合には、万が一事故った場合には非常に気まずいことになりそうです。
また、マイカーに愛着を持つオーナーさんであれば、最初から個人間カーシェアで他人に貸すということはしない人も多いでしょうから、オーナー不足という問題も出てくると思われます。
法人型カーシェアの利便性が高すぎる
日本のカーシェアマーケットの場合には、タイムズカープラスの存在が大きくなりすぎていますので、個人間カーシェアが入り込む余地がないという問題もあると思われます。
タイムズカープラスやカレコ、オリックスカーシェアの利便性があまりにも高いため、個人間カーシェアは、カーシェアというよりはレンタカーの代わりとして利用されるということが多いようです。
格安レンタカー業者の存在
個人間カーシェアのメリットとして、レンタカーよりも低価格で利用できるというポイントがありますが、首都圏などでは格安レンタカー業者も人気となっており、ケースバイケースでどちらを利用するのかを考えるというユーザーが多いのではないでしょうか?
さらに、タイムズカープラスなどは、グループ企業などにレンタカー会社(タイムズカーレンタル)もあり、カーシェアユーザーであればお安く利用することもできるようになっています。
P2P型の個人間カーシェアを利用することでコスト削減できるはずが、他の同様のサービスもコスト削減に成功していますので、個人間カーシェアにそれほど価格的な魅力もなくなっているのかもしれません。
まとめ
次世代のモビリティライフの一角を占めるのではと思われていた個人間カーシェアが、日本では期待されたほどには伸びていないという現状があります。
もともと、日本ではシェアリング型のサービスは馴染みにくいのではという指摘はありましたが、個人間カーシェアの場合にも、文化や習慣の問題に多く影響を受けているようです。
さらに、既存型の事業者の提供するカーシェアリングサービスが、多くのユーザーから指示を受けているということも無視できないでしょうね。
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