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2020年に間に合うか?ついに始まる自動運転の実証実験
2018年2月23日、日産自動車とDeNA(ディー・エヌ・エー)は無人運転車両を活用した交通サービス「Easy Ride(イージーライド)」の実証実験を3月5日から開始すると明らかにしました。
Easy Rideとは、「いつでも誰でも、好きな場所から行きたい場所へ、もっと自由な移動を実現する交通サービス」のことで、一般モニター約300組が参加する今回の実証実験では、モニターが自動運転技術を搭載した実験車両に乗車し、日産グローバル本社から横浜ポーターズまでの合計約4.5kmを往復運行します。
乗車後に実施される一般参加モニターへのアンケートは、自動運転車両の体験ついての評価や周辺店舗と連動したサービスの利用状況、実用化した場合の利用想定価格(どのくらいの金額であれば購入を検討するか)などの情報を収集し、得られた情報は、今後の実証実験やサービスの開発に活用されます。
日産自動車とDeNAでは、実証実験終了後に無人運転環境でのサービスの検討や運行ルートの拡充、有人車両との混合交通下での最適な車両配備ロジックや乗降フローの確立、多言語対応の検証などを進める予定です。
限定された環境の中で、2020年代早期には本格的なサービス提供を目指すとしており、来る東京オリンピックに何らかの形で間に合わせることができるのかどうか注目されています。
DeNAとZMPが袂を分かったのはなぜ?
DeNAは、今回日産自動車との実証実験を進めるにあたり、2015年に合同会社「ロボットタクシー」を設立していたベンチャー企業のZMP社との業務提携を解消しています。
ZMPとは、自動運転制御開発車両プラットフォーム「RoboCar」や車載コンピューターなどを開発する成長企業で、DeNAからの強力なアプローチにより踏み切った経緯があり、業務提携を発表したころから東京マザーズへの上場が予想されていました。
両社は、ロボットタクシーを設立することで、DeNAのネットワーク運営ノウハウとZMPの自動運転技術をコラボさせ、自動運転車両による旅客運送事業を確立する計画でした。
2016年12月にZMPによる一部顧客情報の流出問題が発生しますが、今回の業務提携解消には関係がないと発表されており、むしろ、ロボットタクシーをめぐっての運営方針の違いや考え方の相違から業務提携解消に至ったと両者側から発表されています。
ベンチャー企業であるZMPでは、元々の発想が高齢者や障碍者などの交通弱者の役に立ちたいとするものであり、東京オリンピックに何としてでも間に合わせることをビジネスチャンスと考えるDeNAとの間で運営方針に隔たりが出てくることは容易に想像できます。
大手企業とベンチャー企業が業務提携する場合には良く起こりがちな話で、技術力に魅力を感じる大手企業と、大手企業との提携で信用力に魅力を感じるベンチャー企業(資金調達が楽になる)という関係ですが、ビジネスを成就させるのはなかなか難しいのです。
その反省からか、今回は日本を代表する大手自動車メーカーである日産自動車との業務提携ですから、東京オリンピックに間に合うかどうかは別にしても、より早く事業サービスを提供するためには良かったのではないでしょうか。
スマホの利用方法って面白そうなのか
さて、今回の実証実験で利用されるEasy Rideでは目的地をモバイルアプリで設定しますが、これまでのカーナビやアプリのように行きたい場所を直接指定する以外にも、「やりたいこと」を直接テキストもしくは音声入力することで、おすすめの候補地が表示されるというサービスも提供されています。
例えば、乗車中にも走行ルート周辺のおすすめスポット、最新のイベント情報など約500件の情報を車載タブレットに表示したり、店舗で使えるクーポンを40件用意するなど、従来とは異なる乗車体験を提供しています。
スマホになれている人なら、既に提供されているサービスでもありそれほど必要性を感じない感もあり、そのあたりも含めて実証実験ということでしょうが、DeNAとしては、この領域にこそ同社のビジネスチャンスがあると考えています。
また、安心して乗車できるように、走行中の運転状況はリアルタイムで遠隔管制センターから監視されており、両者の先進テクノロジーを合わせたシステムによる遠隔管理もテストされます。
他社による同じような事例は?
東京オリンピックに向けた大きなビジネスチャンスであるとともに、自動運転は国内だけでも市場規模52兆円(平成27年経済産業省調査による)ともいわれる自動車産業の今後を左右するようなビジネスですが、他社動向はどうなのでしょうか、また、この規模の実証実験は行われているのでしょうか。
日産自動車とDeNAの実証実験発表から2日遅れること2月25日に、ANAとソフトバンクグループSBドライブによる羽田空港による自動運転バスの実証実験が発表されています。
こちらも増え続ける海外からの観光客に対応するとともに、来る2020年の東京オリンピックに合わせた実験となり、ANAは技術革新によって少ない労力と人数で働きやすい環境を整えたい考えで、自動運転バスの導入により空港の定められたルートを走行する定型業務の省力化や省人化を目指します。
両者の実証実験では、自動運転レベルのレベル3とレベル4の実験が行われますが、簡単に自動運転レベルと他社の動向を見ておきましょう。
自動運転にはレベル5までの段階が設定されています。
レベル1:自動ブレーキなどの一つだけの運転支援
レベル2:システムが運転環境を観測しながら、同時に複数の操作を行う部分自動運転
レベル3:すべての操作が自動化されているが、運転者用の制御機器があり、緊急時には運転席にいるドライバーが操作する
レベル4:レベル3と同様のシステムを採用しながらドライバーなしで運行する
レベル5:全ての状況下及び、極限環境での運転をシステムに任せる無人運転で、安全に関わる運転操作と周辺監視のすべてもシステムが行う
現在日本の市販車で採用されているもの、例えばスバルの「アイサイト」などはレベル2のものであり、テスラ社のオートパイロットもレベル2で、現在、レベル3以上のものは販売されていません。
2018年中にもアウディがレベル3相当の車を販売予定としているほか、日本政府は2020年までにレベル4の実用化を、2025年までに完全自動運転目指すとしています。
300組の実験参加者が選ばれた経緯と理由
300組の一般参加モニターのすべては、公式サイトからの募集に対して応募してきた人たちで、それなりに自動運転に関心を持っている人たちとなります。
これだけの規模での自動運転の実証実験はあまり聞いたこともなく、インパクトも大きく、なるべく多くのモニターからクオリティの高い情報を収集し、今後のサービス開発に活用したいという狙いもあります。
また、横浜市が2017 年4⽉に⽴ち上げた「IoT オープンイノベーション・パートナーズ(I・TOP 横浜)」の取り組みの一つとして位置づけられています。
まとめ
SFの世界であった自動運転がここまで身近になっているとは正直驚かれた方も多いのではないでしょうか。
これを機会にレンタカーやカーシェアの電気自動車(EV)を利用してみたいものです。
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