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進むモビリティ産業の再編
100年に一度の大変革期と言われる自動車業界(モビリティ産業)では、新しいサービスが次から次へと提供されていますが、それに留まることなく、これからの商品開発や世界戦略に向けて、資本提携も積極的に進められています。
そんな中で2019年8月28日に発表されたのが、トヨタとスズキによる資本提携です。世界的にも、自動車メーカーの資本提携は進んでいますが、これで国内の自動車メーカーは3つの資本グループに分かれたことになります。
いまさら、自動車メーカー版「三国志」というわけでもないでしょうが、このバランスの良い数字の下で日本の自動車メーカーは、CACE(コネクテッド化・自動運転化・シェア/サービス・EV)の時代を迎えることになりそうです。
3つの資本グループ
1.トヨタ、マツダ、スバル、ダイハツ、スズキグループ
2.日産、三菱連合
3.ホンダ
独立色の強いスズキがトヨタと資本提携した理由
すでに2016年にトヨタ自動車と技術提携を結んでいたスズキですが、独立色が強いと思われていたスズキ自動車は、100年に1度の大変革期と言われる以前に、どうしてもトヨタ自動車と資本提携する必要性に迫られていました。
スズキといえば、好調な軽自動車販売を思い浮かべますが、それ以上に有名なのがインド市場で自動車販売台数のシェア約50%を獲得しているインド市場の覇者であるということです。
50%ってすごい数字だと思われますが、なんと1997年ごろにはシェア約65%を達成していたのです。その後に一時45%台まで落ちますが、ここにきて50%台に戻しているという状況です。
こういうと、何だかすでにピークアウトしており、トヨタの力を借りて挽回しようとしているのではと思われてしまいそうですが、それは事実とは大きく異なります。
もちろん、中国市場に匹敵する自動車市場となる可能性を秘めるインド市場に多くのライバル各社が参入してきたことはもちろんですが、スズキがシェアを落とした最大の理由は、作っても作っても追いつかないほどのインド市場での自動車の需要が旺盛であることです。
つまり、一時期スズキがそのシェアを落とした最大の理由とは、スズキがインド市場での需要に追い付けなかったことが最大の要因であったのです。
トヨタにとっても格好の協業先であった
トヨタにとっても、スズキとの資本提携は非常に大きなメリットがあります。トヨタグループにスズキが参加することで、国内軽自動車シェアは圧倒的にトヨタグループが有利になります。これにより、トヨタがめざす「日本株式会社」へも大きく前進することになります。
また、トヨタはインド市場では出遅れており、インド市場についてはスズキ中心で行くこととし、好調な欧米市場はそのままに、そしてEV化がすすむ中国市場に力を集中することができます。
つまり、トヨタとしては、比較的弱点と思われる分野をスズキと資本提携することで、カバーすることができるというメリットがあるのです。
拡大するインド市場
中国に次ぐ世界第2位である13億人以上の人口を有するインド自動車市場は、私たちの想像をはるかに超える勢いで拡大しています。自動車市場の急激な拡大は、中国と同様の深刻な大気汚染問題を引き起こしており、インド政府の関心は長らく、よりクリーン度の高いEVにありました。
ところが、世界的に見てもEVが普及しそうなのは、多額の補助金付きの中国市場くらいなもので、それ以外の市場では一部の富裕層の贅沢品として販売されているのが実情です。
このような状況のもと、遂に、インド政府はかねてよりスズキが提案してきたHV車による大気汚染対策を本気で検討するようになりました。
スズキにとっては、願ったもないチャンスが到来したというところですが、インド市場の規模を考えると、とてもスズキ1社ではその需要に答えられないというのが実情で、そこにインド市場に大きな関心を持つトヨタとの資本提携は必然的であったのかもしれません。
スズキ・トヨタグループによるインド市場における戦略とは
2019年3月期の決算時の数字を見ると、スズキの国内販売台数は73万台であるのに対して、インド市場での同社の販売台数は175万台と、国内販売台数の倍以上の台数となっています。いかにスズキがインド市場での強みを持っているのかがわかりますが、この要因としてはいくつかのポイントがありますが、中でも大きいのがクルマのサイズでしょう。
スズキが売っているのは、800CC前後のクルマ(いわゆる軽自動車)であり、未だ発展途上にあったインド市場のニーズに完全にマッチしていました。ところが、他の市場同様に、経済成長が続く中、少し余裕が出てきたインドの人々には800CCよりも少し上のクルマのニーズが出てきており、現時点ではスズキはこの需要に対してサービスを供給しきれていない状況です。
この需要にたいして、HVで大気汚染対策にもなるプリウスやアクア、さらにその上のニーズに対してはレクサスをOEMとして販売できれば、数年後には、インドの多くの街で非常に多くのプリウスを見かけるようになる可能性は高いと思われます。
今回のトヨタ・スズキの資本提携というニュースの最大のポイントは、プリウスなど軽自動車の上のセグメントのHV車をインドで大量生産し、インド市場の需要に対応するということになります。
2019年9月5日にウラジオストックで日印首脳会談
日本史大好き、かつ、旅行大好きな筆者は、ウラジオストックというと「二百山高地」を思い出し、また、最近俄かに人気となっている日本から最も近いヨーロッパというイメージですが、それはさておき、9月に日印首脳会談がこの地で開催されました。
安倍首相は、よくインドの首相と会っているというイメージがあり、新聞報道などを見ると安全保障問題などが報じられることが多いのですが、日本とインドは経済関連でこれほどまでに深い関係にあったのですね!当然、この会談でもスズキ・トヨタ連合の工場誘致などの話も出たのでしょう。
なお、この首脳会談は、同地で行われる2019東方経済フォーラムの中で行われ、日本は安倍首相を団長にビジネス界の代表130人ほどが参加したようで、ウラジオストック大注目かもですね?
まとめ
トヨタとスズキの資本提携により、日本の自動車メーカーは、トヨタグループ・日産(ルノー?)三菱連合・ホンダという資本関係から見ると3つのグループに分かれたことになります。ホンダはどうするのか注目されますが、中国自動車メーカなどとの提携が噂されているようです。
今回の資本提携の背景には、日本の自動車メーカーとしてインド市場での旺盛な需要に応えていくためのものであるというのが最大の目的でしょうが、これからトヨタが進めていく超小型EV戦略にも好影響が期待されます。
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