世界的に広がるEV市場
EVというと、日本のリーフや米国のテスラが有名ですが、次世代のモビリティサービスの中心になることが確定的なEVは、現在世界中の自動車メーカーがその開発に力を注いでいるところです。
次世代のモビリティサービスでは、ダイムラーの提唱する「CASE」のEとして、コネクテッド化・自動運転・シェア(サービス)化・EVの一つを担うEVですが、実は、EVの発展段階においては各国によりその事情は少しばかり異なっています。
つまり、ガソリン車全盛時代に、なぜ大金を投じてEVを開発しなければならないのかという点において、各国の事情が異なるのであり、すべてのEVが次世代のモビリティサービスのために開発されているわけではないのです。
中国のEV市場
現時点でEV市場が最も成長していると思われるのが人口13億人(2017年)を超える巨大市場を抱える中国です。中国の2018年におけるEV販売台数は98万4000台に達しており、世界のEV市場の過半数を占めています。
中国でこれほどまでにEVが売れているのには大きな理由があります。日本にも影響を及ぼしている中国の大気汚染問題への強い危機感から、大気汚染の主要因であると考えられる自動車の排気ガスの削減に中国政府が新エネルギー車(NEV)を強力に推進しているという背景があります。
中国政府は、2009年には公共バスへの補助金制度創設をスタートさせ、ついには乗用車へも補助金制度を拡大しています。
乗用EVの場合、中国政府はEV1台に5万5000元(日本円で約86万円/2019年7月)という手厚い補助金がメーカーに支援されているのですが、驚くことに、これに加えて各地方政府からもほぼ同額の補助金が支援されて、中国のEV市場をけん引しているのです。
補助金目当ての中国EV市場
このような状況下ですから、もはや「CASE」や環境保護といっている場合ではなく、自動車メーカーとしてはEVをとにかく販売しているというのが中国のEV市場の実情となっています。
中国のEV市場のもう一つの特徴としては、EVの主要メーカーが中国の国内自動車メーカーその大半を占めており、主要な外資自動車メーカーは現時点では静観を決め込んでいるというところです。
外資自動車メーカーが中国のEV市場に本格参入しないのは、あくまで補助金目当ての市場であり、この補助金自体も2020年にはなくなってしまう予定となっているからです。
この補助金制度という側面には、中国政府による自国の自動車メーカーの育成という面も多分にあったものと思われます。
中国政府によるNEV規制とは
前述のように、中国政府の新エネルギー車に対する補助金制度は2020年に終わる予定ですが、一方で、今年から「一定台数以上のクルマを販売する自動車メーカーは、その販売台数の一定比率をNEVにしなければならない」というNEV規制が実施されます。
NEVの定義とは以下のようになります。
- PHV(プラグインハイブリッド)
- EV(電気自動車)
- FCV(燃料電池車)
注目されるのは、このNEVの中に通常のHV(ハイブリッド)が含まれていないということです。
ここには、中国政府による「自動車強国」になるという国家戦略が現われていると考えられ、現在、中国市場を席巻しているダイムラー、BMW、トヨタなどの主要自動車メーカーとガソリン車の分野で戦っても勝ち目がないので、敢えて、NEVで国内自動車メーカーに勝負させるという思惑が見て取れます。
いずれにせよ、この規制により主要外資自動車メーカーもEV市場に参入せざるを得なくなり、これにより中国における本格的なEV市場が発展していくことになるのではと期待もされています。
補助金無き後の中国のEV市場はどうなるのか
各国の事情により、その成長の過程は大きく異なるEV市場ですが、中国EV市場の場合には補助金目当ての市場から、NEV規制後の市場は言うまでもなく大きく変化することになります。
補助金が本当になくなってしまったら、現状のEV販売台数はそれなりに落ち込むことは当然予想されています。つまり、他の先進国同様に、「CASE」を意識した市場となり、補助金がなくなるEVについては、その販売価格が大きな問題となるはずです。
EVの価格に対する問題は何も中国ばかりではなくグローバルな問題でもあります。中国政府の規制で他の選択肢がなくなれば話は別ですが、内燃機関車(ガソリン車やHVなど)との価格差が100万円以上はあるEVを、環境規制だけで一般ドライバーがEVにシフトするとは考えられません。
本格的にEVが普及していくために必要なのは、中国政府のNEV規制ではなく、価格差の問題を解決することが重要なポイントとなります。
その意味では、グローバルな問題でもあるEVの価格という問題が、中国市場という世界最大の市場で解決されるのかが注目されます。
電池シェア方式とカーシェア
EVとガソリン車などの価格の大きな違いは、EV価格についてはそのかなりの部分が電池によって占められているということです。
日産リーフの事例を見ても明らかなように、EV自体に充電電池を搭載するだけで結構なお金がかかりますし、この電池は利用するたびに劣化する問題も指摘されており、航続距離は次第に短くなり、数年後には大金をかけて交換する必要が出るケースもあります。
つまり、ガソリン代がかからず維持費が安いはずのEVが、この充電電池のおかげで逆に割高となってしまう可能性があるのです。
この問題を解決する方法の一つとして考えられているのが電池シェア方式です。EVは電池で様々なコストがかさむ可能性が高いわけですから、この電池を搭載せずにシェアサービスにしてしまおうという考え方です。
現在、日産リーフの場合、充電設備が非常に増えたとはいえ、急速充電でも約30分ほどが必要でしかも80%くらいの充電となります。これが電池シェア方式になると、ステーションに行って充電電池を交換するだけでいつでも簡単に100%充電が可能となります。
この方式ですと、EV販売価格から電池代が差し引くことができますので、ドライバー(ユーザー)が毎月の電池シェア方式のコストを払うだけでOKとなり、EVの価格問題を解決させる大きなヒントになるのではと期待されています。
こうなってくると、さらに電池シェア方式よりも、カーシェアにしたほうがよりコスト的には大きなメリットがありますし、あるいは、トヨタの「KINTO」などのサブスクリプションサービスも有効なサービスとなるのかもしれません。
トヨタ自動車が大きく変化しようとしているのは、多分に中国市場意識しているということも間違いなくありそうですね。
まとめ
急成長する中国のEV市場ですが、これまでの補助金目当ての国内自動車メーカー中心の成長段階から、主要な外資自動車メーカーも参戦する本格的な成長期に突入することになりそうです。
グローバルな市場と同様に、EVの価格が重要なポイントとなりそうですが、来年以降なくなるといわれる補助金政策に変わって、電池シェア方式やカーシェアなどの新たなEV普及のためのサービスが展開されるようです。
日本の国内カーシェア市場にも大きな影響を及ぼすとともに、カーシェアユーザーにとってはさらに進んだ付加価値の高いサービスを受けることができるようになりそうです。
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