「宮型」霊柩車を見なくなった?
最近見亡くなったものに、「宮型」霊柩車があります。地方によって異なるようですが、筆者が子供のころには、この「宮型」霊柩車を見ると幸運なことが起こる前兆(※)とか言われまたものです。この頃は、霊柩車かどうかの見分けがつかないクルマになっているようです。
葬儀といえば、金箔に彩られたド派手な宮型霊柩車というイメージでしたが、実は、2017年には宮型霊柩車の元祖ともいわれていた、大阪にある霊柩車製造会社が何と倒産しているのです。倒産理由としては、代理人によると、霊柩車単価が下落し、受注減少による採算の悪化が大きな要因とのことです。
全霊協(全国霊柩自動車協会)によると、2016年4月時点で全国にある霊柩車は約5,000台、そのうち宮型霊柩車は1割強の650台ほどということです。最近ではもって減少しているのでしょうが、平成12年のピーク時には約2150台ほどの宮型霊柩車が存在したそうですから、この20年弱で大幅に減少していることになります。
※ 易学の陰極まれば陽、陽極まれば陰、からきているようです。地方によっては、霊柩車を見たら親指を隠せ、と言い伝えられているところもあるようで、これは霊柩車をみると親の死に目に会えない、ということからきているようです。
霊柩車の歴史
大昔には、日本では遺体を収めた棺を輿に乗せ人が担いで運んでいました。その後、大八車のようなものに乗せて運ぶようになりますが、ここらが日本の霊柩車のはしりというところでしょうか。
この大八車には、二方破風の屋根がつけられ、側面には花鳥等の彫刻が施され、装飾や形状などは宮型霊柩車に近いものであったようです。
その後、トラックの荷台に輿のようなものを乗せて運ぶようになり、さらに自動車と一体化して現在の霊柩車が登場します。
1990年ごろまでは車体の大きな米国製のバンが利用されることが多かったのですが、その後は「国産車を改造して利用することが多くなっています。
最近は、宮型霊柩車どころか、霊柩車自体を見ることがほとんどなくなりましたが、それは後述する理由により、ほとんどのケースでは見ただけでは霊柩車と気づかないからでしょう。
宮型霊柩車が減少した理由とは
さて、そんな宮型霊柩車が大幅に減少した最大の要因と言われているのが、火葬場問題です。昔から火葬場といえば、町から離れた山の中腹あたりに建設されていることが多く、火葬場に行くためにはクルマで山道を登っていくことが多かったものです。
ところが、近年、これらの地域にも住宅が建設されるようになり、そうなると、火葬場に行くためには霊柩車が住宅街を通って火葬場に行く必要が出てくるようになりました。
ところが、そうなると火葬場というと縁起が悪いとか、住宅街の価値が低下するなどという話が出てくるようになります。最近でも、火葬場建設反対運動などやっているところがありますよね。
こうした苦情が、住民から自治体のほうに急激に増えだしたことで、自治体が運営する火葬場から、霊柩車とはっきり識別可能な宮型霊柩車の火葬場への入場が規制されるようになりました。
2番目の要因としては、葬儀自体が大きく変わってきているという問題があります。核家族化や少子高齢化により、以前のような規模の葬儀が大きく減少しており、いわゆる家族葬などの小規模な葬儀が増えており、霊柩車にも、宮型霊柩車のような派手なクルマよりも一般的なバンなどが好まれる傾向が強まっています。
バブル崩壊の影響も
もう一つの要因として、そもそも葬儀社が宮型霊柩車を保有しなくなった、ということもあるようです。バブル時代の影響もあったと思われますが、派手になっていった冠婚葬祭もバブル経済崩壊以降は、規模も小さくなりお金をかけないようなものが多くなりました。
そんな中で、宮型霊柩車を購入し、維持するためには結構なコストがかかることから、葬儀社としてもコスト削減という観点から、宮型霊柩車を保持しない、あるいは減少する方向は致し方なかったものと思われます。前述の、宮型霊柩車の元祖と言われた企業の倒産の要因もこの辺りにありそうです。
ただし、日本では大幅に減少している宮型霊柩車ですが、アジア諸国の特に仏教国の中では、宮型霊柩車が「走るお寺」ということで一定の需要はあるようです。
あちらの世界でもミニバンが流行?
現世とは、あの世の現世(ウツシヨ)ともいわれますが、セダンタイプに代わって乗用車の主流モデルになりつつあるミニバンが、霊柩車の世界でも増えています。大きさがちょうどいいということもあるでしょうが、まさに、私たちが快適に乗れるということは、あちらの世界でも同様に快適だということなのでしょう。
葬儀社としてもコスト面では大助かりでしょうし、最近の家族層の普及など、贅沢な葬儀は控えたいという現在の風潮にもぴったりマッチします。
2019年6月、横浜市のパシフィコ横浜で開催された葬儀サービスの総合展示会「フューネラルビジネスフェア2019」(主催:総合ユニコム)では、車両展示した霊柩車メーカー3社すべてでミニバンが展示されていました。ミニバンが世の中に身近な存在として定着したことや、前述のように葬儀の倹約志向など様変わりする時代のトレンドが映し出されていました。
倹約志向とは言うものの、確かに見た目は、宮型霊柩車のように一目見て霊柩車とわかるようなド派手な作りではなく、ミニバンそのままの見た目となっていますが、ただ中身は霊柩車用に改造されており、あたかもキャンピングカーを見るような作りとなっています。
遅かれ早かれ、私たちもそう遠くない未来ではこの霊柩車のお世話になるわけですから、自分がどんな霊柩車に乗るのかくらいは知っておいても損することはなさそうです。
大八車から、トラック、そして霊柩車から宮型霊柩車、現在は洋式のバンから国産ミニバンなどに代わり、次はEVにでもなるのでしょうか?火葬場にもEVQuickが設置されるのも遠くない時期かもしれません。
まとめ
最近、宮型霊柩車というか、霊柩車自体を見なくなりましたが、これには3つほどの理由があるようです。まず火葬場の問題、そして葬儀自体が変化していること、また、それに伴い宮型霊柩車のようにコストがかけられなくなっていること、このようなことから霊柩車を見かけなくなったようです。
私たちの現世でも、マイカーの時代から、自動運転やシェア・サービスの時代へと変化しているように、霊柩車の世界にも変化が訪れており、まさにこの世を映しているようで興味深いものです。
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