矢継ぎ早に計画されるトヨタの新戦略
昨年末の「トヨタ自動車は、自動車メーカからモビリティカンパニーへ変わる」という発表は、日本国内では衝撃をもって受け止められましたが、満を持しての発表であったようで、それ以降は矢継ぎ早にトヨタ自動車の新戦略が展開されています。
そしてついに今回発表されたのが、トヨタのEV普及モデルです。
トヨタといえば、プリウスなどに代表されるハイブリットカーのイメージが非常に強く、これまでEV化については、なぜトヨタはEV化を進めないのかという議論は数多くありました。
100年に1度の大変革期といわれる自動車業界では、来るべき完全自動運転化時代を目前にして、EVのデフォルト化が決定的な状況となっています。
とは言うものの、現状では、ガソリン価格の高騰や排気ガス規制などの問題もあり、トヨタの主力であるハイブリッド車が世界的にも売れまくっているという状況です。
ハイブリッド車は今後も好調を持続すると思われますが、こんな時だからこそ強い危機感を持って、EV化に切り替えるというトヨタ自動車の強い意志が感じられます。
今回の発表ではEV化が5年前倒しされることに
2017年に設定されたトヨタのEV普及化は、2030年にHV(ハイブリッド)・PHV(プラグインハイブリッド):450万台以上販売、EV(電気自動車)・FCV(燃料電池自動車)100万台以上販売というものでしたが、今回の発表ではこの計画が5年程度前倒しにされたことになります。
これについては、世界的なEV化の進展が予想を上回るスピードで進んでおり、トヨタ自動車の危機感の現われとも見れますし、好調なハイブリッドカーの販売状況が後押ししているとも考えられます。
元々、日本では2020年の東京オリンピックでのレベル4の自動運転化、そして完全自動運転化の目標を2025年としていますので、トヨタもここに合わせてきたということかもしれません。
スバルや中国を巻き込むトヨタのEV戦略
トヨタ自動車は、ハイブリッドからEV化への転換に際してはEV普及のための新しいビジネスモデルが必須であり、国家戦略としEV化を急ピッチで進める中国や、国内同業のスバル自動車を巻き込んだものとなっています。
中国を巻き込め
トヨタ自動車によると、2018年の世界の主要市場でのEVマーケットは121万台となっています。円グラフから明らかなように、巨大なマーケットの下で、国からEV購入補助金として最大100万円が支給される中国のシェアが60%近い数字となっています。
日本のリーフもそうですが、EVの問題点の一つである価格が高いという問題は、普及する前の時点では各国の助成金次第というところもあり、必然的に国の方針が大きく影響してくることになります。
従って、中国は自動車メーカーにとっては最大のEV市場となるわけで、トヨタ自動車にとってもEV普及化のためには無視できないマーケットとなっています。
トヨタ自動車では、新たに中国の寧徳時代新能源科技(CATL)などから電池を調達する方針も明らかにしました。提携と商品投入の加速で電動車普及に向け体制を強化し、市場での存在感を高めていきます。
スバルとEVプラットフォームを共同開発
新しいビジネスモデルでは、かねてより関係の深かったスバルと中小型のEV専用プラットフォームを共同開発します。
スバルはトヨタと2005年に業務提携し開発や生産、販売で協業を進めており、12年には共同開発したFRスポーツカ「TOYOTA86」や「BRZ」を販売。18年にはトヨタの持つハイブリッド車技術の知見を生かし、スバル独自のプラグインハイブリッド車を米国で発売している。EVでタッグを組むことで両社の距離は一層縮まることになります。
トヨタとスバルがEV分野で連携することになったのは、各国が環境規制を厳格化する中で、トヨタのEV技術、スバルのAWD(全輪駆動)技術を持ち寄り開発の効率を高める目的もあります。
共同開発するEV専用プラットフォームはセダンやSUVなど複数車種にまたがって採用され、派生車種を開発しやすくなります。これに伴い、従来のスバルのEV開発チームはトヨタのEV開発チームに合流します。
スバルはトヨタやマツダ、デンソーなどが参加するEVの基盤技術開発会社「EV C・A・スピリット」にも参加しており。これらEVの基盤技術を共同開発するEV専用プラットフォームに活かす考えです。
トヨタのEV展開
トヨタのEV展開は、2020年に中国で「CH-R」「IZOA」を発売し、2020年代後半にはグローバルで10車種以上のEVを発売予定です。
日本市場においても、EVは小型・近距離・法人利用などの面で新たなビジネスチャンスがあるとの考えを示しており、2017年の東京モーターショーで公開した「Concept-愛i RIDE」をベースとした「2人乗り超小型EV」を2020年に発売する予定で開発を続けています。
市販予定となる超小型EVは、軽自動車よりも一回り小さいというボディで横並びの2名乗車を実現し、時速60km/h、1充電走行距離100kmとされています。また、この超小型EVをモデルとして、1人乗りの「ビジネス向けコンセプトモデル」も検討しているとのことです。
新車販売という観点からは、このような超小型モデルのEVが果たして人気化するのかという疑問はあるでしょうが、欧州ではカーシェアのEVとして三菱のi-MiEVが採用され始めており、トヨタ自動車は自動車メーカーからモビリティカンパニーになるという観点から考えると納得がいきます。
これに加えて、人が歩いて移動するエリアを対象とした「歩行領域EV」のジャンルも開発が進められており、こちらは東京オリンピックではお目にかかることになりそうです。
トヨタでは、EVの普及化に向けて、新しいビジネスモデルの構築とともに、車両の開発、電池の暗転的供給、耐久性能の向上、使用後のリユースなども進めています。これらの体制が整うことで、トヨタの本格的なEV普及が始まりそうです。
まとめ
自動車メーカーのトヨタ自動車としては、ハイブリッドカーが最大の商品となっていますが、これから先にトヨタ自動車が目指すモビリティカンパニーとなるためにはEV化が戦略の中心となります。
まだまだやるべきことは多くありそうですが、市場は待ったなしでEV化の普及を求めているようで、トヨタのEV普及も急ピッチで進められていきそうです。
カーシェアの車両がEV化するのも、おそらくは驚くほどの速さで展開されるのでしょうね!そんなカーシェアリングを、あなたのお近くのカーステーションを探したり、レンタカーや他のカーシェアリング会社との料金比較ができる『カーシェアリング・レンタカー比較のDRIVE go SEARCH』で探してみることをおすすめします!