近年、女性の運転免許取得率が上昇中!
街行くクルマを眺めながら、運転する女性が増えてきたなと感じている人はきっと少なくないでしょう。また、その流れを感じ取った自動車メーカーも内外装のデザインや開発に女性スタッフを配属し、カタログモデルとして女性向けの仕様やグレードをラインナップするなど、今ではひとつの大きなユーザー層として捉えています。では、実際にどれくらい女性ドライバーが増えているのか? ここ40年間における運転免許証保有者数の推移から見ていきたいと思います。
平成28年(2016年)の警察庁のデータを参考にすると、今から約40年前の1976年、運転免許証を持つ女性は819万1,000人(構成比23.3%)でした。ところが、10年後の1986年には1,904万3,000人(同35.2%)と2倍以上に増え、その後も1996年に2,790万1,000人(同39.9%)、2006年には3,407万2,000人(同43.0%)となり、そして2016年に3,694万9,000人(同44.9%)に達しました。直近の10年を見ただけでも約300万人、割合にして8%も運転免許証を保有する女性が増えているのです。
また、構成比も約45%まで向上。つまり、日本全体で運転免許証を持っている人のうち、ほぼ2人に1人が女性という状況になっています。もちろん、免許証を取得した人すべてがクルマを運転するわけではなく、いわゆる“ペーパードライバー”もいるでしょうが、それは割合はともかく男性でも同じこと。「女性ドライバーが増えた」というのは決して感覚での話ではなく、実際にそうだということを上の数字が物語っていると言えるでしょう。
一方で、女性同士での旅行は車の運転を避けたり、免許を持っているのにいつも男性に運転してもらったりと、男性に比べて運転しなければならないケースが多くはないかもしれません。その原因の1つに、運転の難易度や安全性があるのではないでしょうか?
しかしながら、昨今の技術進歩はめざましく、メーカー各社はこぞって運転補助システムと言われる、いわば自動運転という言葉で騒がれている技術を開発しています。この技術が、女性の運転への抵抗を低くしてくれるかもしれません!
クルマの安全性向上に貢献する運転補助システムをメーカー別にみてみよう
自動車メーカー各社が力を入れる運転補助システム。これはカメラやレーダーなどを駆使してクルマが周囲の状況を判断し、自動的にブレーキをかけたりステアリングを操作したりして衝突や事故を回避、あるいは被害を軽減してくれるシステムの総称になります。
中でも代表的かつ一般的なのは、前方の障害物に対して自動ブレーキをかけ、追突を防止するもの。そこから発展してクルーズコントロールと組み合わされ、前走車に合わせて自動で速度を調整し、車間距離を保ちながら走行するアダプティブ・クルーズコントロールが誕生しました。加えて、走行している車線を検知して、逸脱しそうになると警告音やステアリングへの振動などで知らせるレーンキープアシスト、さらにはその際にステアリング操作を支援するものまで登場しています。
また、衝突や事故を回避するためだけでなく広い意味での運転補助システムには、ヘッドライトのハイ/ロービーム自動切り替え、スイッチひとつで指定スペースへの駐車を自動で行うパーキングアシスト、ペダル踏み間違えによる急発進防止機能、後方や側方から接近する車両の検知など、安全性向上のために採用される装備全般が含まれます。ここでは、そのような運転補助システムをメーカー別に見ていきたいと思います。
運転補助システム:トヨタ
まず、トヨタは『トヨタセーフティセンス』を2種類で展開しています。ベーシックかつ多くの車種に搭載されているのが、単眼カメラとレーザーレーダーを併用した『トヨタセーフティセンスC』で、10~80km/hで車両に対してのみ作動する自動ブレーキと車線逸脱警告のレーンデパーチャーアラート、オートマチックハイビームの3点セットが基本。
それに対して上級車種向けに用意されるのが、レーザーレーダーに代えてミリ波レーダー(と単眼カメラ)を採用した『トヨタセーフティセンスP』になります。機能面における『C』との違いは、自動ブレーキが歩行者対応型となり(作動速度10~80km/h、対車両も10km/h~最高速度に拡大)、レーンデパーチャーアラートにステアリング制御機能が追加。さらに40~100km/hでのレーダークルーズコントロール(C-HRは全車速対応)もプラスされます。また、30~80km/hで作動し、衝突回避や衝突被害を軽減するブレーキアシスト、プリクラッシュセーフティシステムが搭載されるのも『P』の特徴です。
参考:次世代の予防安全、はじまる。Toyota Sefety Sense
運転補助システム:日産
続いて、『プロパイロット』を展開する日産。その数ある機能の中で、最も大きな話題になっているのが高速道路同一車線における自動運転、インテリジェントクルーズコントロールです。30~100km/hで作動するこのシステムは、前走車を検知するとアクセルとブレーキに加え、車線を逸脱しないようステアリングも自動で操作します(前走車がいない場合は一般的なクルーズコントロールとして機能)。
これにより『プロパイロット』は5段階で評価される自動運転のうち、国産メーカーでは唯一となるレベル2(加速、操舵、制動のうち複数の操作をシステムが行う状態)に該当。国産メーカー各社が実用化しているレーダークルーズコントロール系では最も進んだシステムと言えるでしょう。
その根拠は、高性能レーザースキャナーと単眼カメラの併用により前走車や走行車線の検知を高精度に行っているからに他ならず、緊急時に作動する自動ブレーキ、インテリジェントエマージェンシーブレーキの実現にも貢献しています。尚、インテリジェントエマージェンシーブレーキは車両に対しては10~80km/h、歩行者に対しては30km/h以下での衝突回避能力を持っています。
また、駐車スペースを指定してスイッチを押すだけでステアリング操作を自動で行い、枠内への駐車をサポートするインテリジェントパーキングアシストや、自車を真上から見ているような映像で駐車を支援するインテリジェントアラウンドビューモニター、車両後方の映像をルームミラーに映し出すインテリジェントルームミラーなども用意されています。
参考:先進安全装備 NISSAN INTELLIGENT MOBILITY
運転補助システム:スバル
市販車に初めて自動ブレーキを搭載したスバル。最新の『アイサイトⅢ』は、他社がレーダーと単眼カメラを併用しているのに対して、左右2つのカメラ(ステレオカメラ)を搭載しているのが最大の特徴となります。そのメリットは画像を立体的に解析できること。これによりクルマはもちろん、センターラインやガードレール、歩行者や自転車まで認識するだけでなく、カラー画像化によってブレーキランプの認識も実現しています。ちなみに、自転車まで検知できるのは今のところスバルとボルボだけです。
そんな『アイサイトⅢ』で最も新しい機能はツーリングアシスト。全車速域追従機能付きクルーズコントロールと先行車追従操舵に、作動速度域を0km/h以上とした車線中央維持を組み合わせることで、0~約120km/hという幅広い速度域でアクセル、ブレーキ、ステアリングの各操作を自動でアシストします。つまり、ツーリングアシストは高速巡航からストップ&ゴーが続く渋滞までオールラウンドに対応できるわけです。
また、衝突安全デバイスとしてはプリクラッシュブレーキが挙げられます。前方の車両や歩行者などを認識して、衝突の可能性が高まると音と表示で警告した上でブレーキを自動制御。前走車との速度差が50km/h以下であれば衝突を回避、または被害を軽減する他、場合によってはVDCの車両統合制御によって回頭性を高めてステアリングでの回避操作をアシストします。その他、バック時の衝突を避ける後退時自動ブレーキシステム、誤操作による急な飛び出しを防ぐAT誤発進/誤後進抑制制御なども採用されています。
さらに、『アイサイトⅢ』には、後側方から接近する車両を検知してドアミラー内蔵インジケーターや警告音で注意を促すスバルリヤビークルディテクションを始め、サイドビューモニターやハイビームアシスト、自動防眩ルームミラーなどを追加できるアドバンスドセイフティパッケージの装着も可能。安全性をより向上させることができます。
運転補助システム:Honda
ミリ波レーダーと単眼カメラで前方の状況を認識し、ブレーキやステアリングを協調制御。衝突や事故を回避、あるいは被害の軽減を狙うのがHondaの『Honda SENSING(ホンダセンシング)』です。
その機能のうち主なものは、まず衝突軽減ブレーキ(CMBS)。これは前走車や対向車、歩行者に対して5km/h以上の速度差を検知した時、まず音と表示で警告し、さらに接近した場合は軽いブレーキング、衝突の可能性が高まると強いブレーキングと3段階で衝突の回避や被害の軽減をサポートするものです。また、同様に安全性の向上に関連する運転補助システムとしては、ペダル操作ミスによるクルマの急な飛び出しを防ぐ誤発進/後方誤発進抑制機能、歩行者と衝突のおそれがある場合、車道方向へのステアリング操作を支援する歩行者事故低減ステアリング、車線からのはみ出しを検知するとステアリング操作をサポートし、場合によっては自動ブレーキも行ってクルマを車線内に留まらせる路外逸脱抑制機能などがあります。
一方、ドライバーの負担を減らすシステムとしては、30~100km/hの範囲で前走車と適切な車間距離を維持しながら追従走行を行うアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)が挙げられます。車種によっては、前走車が止まると自動的に停止し、前走車が走り出すとスイッチ操作またはアクセルを踏むことで追従走行を再開する渋滞追従機能も追加されます。その他、高速道路で車線の中央付近を走らせるためにステアリング操作を助ける車線維持支援システム(LKAS)や先行車発進お知らせ機能なども搭載されています。
また、メーター内にインジケーターを表示することで道路標識の見落としを防ぐ標識認識機能、前走車や対向車を検知してヘッドライトのロービームとハイビームを自動で切り替えるオートハイビームなども『ホンダセンシング』を構成する運転補助システムと言えます。
運転補助システム:マツダ
ドライバーが余裕を持って回避できるよう、クルマがアクティブに危険を探し出す。それがマツダの安全技術、『i-アクティブセンス』の基本的な考え方です。その実現のため、ミリ波レーダーとフォワードセンシングカメラが前方の状況を、リヤバンパー内側に設置されたレーダーが後方や側方の状況を監視します。
安全性向上デバイスとしては、まず15km/h以上で作動するアドバンストスマートブレーキサポートがあります。走行中に前方の状況を検知して、クルマに対しては4~80km/hで、歩行者に対しては10~80km/hで自動ブレーキをかけて衝突を回避したり、被害を低減したりします。また、自車の側方から後方50mにかけて接近車両を検知するブラインドスポットモニタリングも搭載。検知した側のドアミラー鏡面にインジケーターを点灯させることで車両の接近をドライバーに伝え、その状態でウインカー操作をするとインジケーターの点滅および警報音で警告を行います。レーンキープアシストは、アシスト開始までの反応時間を遅めた逸脱回避支援と、積極的に車線の中央を維持するよう早めのアシストを行うライントレースの2種類が備わり、ドライバーがいずれかを選択できるようになっています。
また、ドライバーの負担軽減を狙って、30~100km/hの範囲で先行車との車間を維持しながら追従走行するマツダレーダークルーズコントロールを搭載。これには、前走車との距離を視覚的に表示してドライバーに車間距離を認知させる車間距離認知支援システムも採用されており、車線逸脱の可能性がある場合はレーンキープアシストがステアリング操作をサポートします。
さらに、速度とステアリング舵角に応じてヘッドライトの照射範囲を最適化するアダプティブフロントライティングシステムや、ハイビームとロービームに加え、高速走行時により遠くを照らすハイウェイモードを搭載し、状況に応じてその切り替えと照射範囲をコントロールするアダプティブLEDヘッドライトなどが車種に応じて採用されています。
カーシェアリングが狙うべきは女性ユーザーか?
今後、続々と新型車の投入が期待されるカーシェアリングでは、運転補助システムを搭載したクルマが増えてきています。とくにメーカー運営のHonda EveryGoなどのカーシェアリングは購入への期待も併せ持つため、Honda SENSING等の搭載車が配車されています。
クルマを運転するすべての人にとって事故のリスクが低減するのは素晴らしいことですし、新車を購入することなく気軽に、かつリーズナブルに運転補助システムを体感できることがカーシェアリングの大きなメリットでもあります。
それ以前に維持費がかからず、必要な時に必要な時間だけ使えるというメリットを持つカーシェアリングですから、運転補助システムが徐々に普及しつつあるという今の流れは、結果的にカーシェアリングの魅力をより一層高めることにつながっていきます。
ここで女性ドライバーが増えている現状を重ねてみると、たとえば、車庫入れが不得意な人は男性ドライバーよりも女性ドライバーに多いと聞きます。もしクルマが自動で車庫入れをしてくれるなら、女性ドライバーにとってクルマを運転するハードルが低くなることは間違いありません。もちろん、これまで説明してきた通り、運転補助システムは車庫入れだけに留まらず、もっと幅広いシーンに対応しています。つまり、運転補助システムが進化するほど、より積極的にクルマを運転したくなる女性ドライバーが増えるのではないでしょうか。
以上を踏まえると、今後カーシェアリングが狙っていくべき層は女性ドライバーなのかもしれません。
まとめ
カーシェアリングで利用しやすくなってきた運転補助システム搭載車。どの事業者に、どんなクルマが用意されているのか? 『DRIVE go SEARCH(ドライブゴーサーチ)』で検索してみて下さい。