意外と知られていないOEM車
OEMとは、Original Equipment Manufacturing(Manufacturer)の略語のことで、他社ブランドの製品を製造すること(あるいはその企業)のことを指します。一昔前まではOEMというとアパレル業界というイメージがありましたが、最近では、化粧品や家電、食品、そしてなんと自動車業界にまで普及しています。
自動車業界では、OEMのことをバッジエンジニアリングとも呼び、OEM車のことをリバッジモデルまたはバッジモデルと呼んだりします。自動車業界のOEMは、多くの自動車ブランドを有する米国のビック3やフランスのルノー、日本ではトヨタ自動車やその子会社などに多く見られます。
日本の場合には、従来は「販売のトヨタ、技術の日産」などといわれたり、自動車メーカーによって特徴や優劣があったのですが、バブルの崩壊後はコスト削減という共通の目的からメーカー間での部品の供給の統一化なども進んでいます。
そのようなことから同じようなタイプのクルマの場合には、自動車メーカーによる差別化が困難となり、人気車種以外のクルマについては生き残るのが難しい状態となって一ます。
ここで自動車業界でも活発化してきたのがOEMで、一定の車種は揃えたいものの採算性の問題から厳しくなっていた状況には最適な方法となったのです。
OEM車のメリット・デメリット
このようにして普及してきた自動車業界のOEMですが、良い面ばかりでなくデメリットと感じられるようなところもあります。メリットとデメリットについて考察します。
OEM車のメリット
供給する側(供給元)にとっては、何といっても自社以外の販売ルートができることになりますので、販売台数を伸ばすことができるという魅力があります。このことは、販売台数が増えることで大量生産によるコスト削減効果も期待できますし、OEM供給ということで提供先からロイヤリティを受け取ることもできますので、供給元としてはメリットが大きいです。
供給を受ける側(供給先)としては、新車開発に発生する多額の開発費をかけずに商品ラインナップを揃えられるというメリットがあり、また、販売したクルマは販売元ではなく自社の販売実績とすることができます。
レアケースですが、OEM車が供給元よりも、供給先のほうでより売れるということも発生しています。このケースなどはOEMの成功事例であり、どちらにとっても大きなメリットとなります。
OEM車を購入する人の場合、OEM車と知らずに購入している人も多いと思われますが、新車購入の際には供給元と供給先で相みつをとることで、特に供給先での値引きが期待できる可能性があります。
OEM車のデメリット
まず、供給する側(供給元)としては、自社の技術が供給する自動車メーカーに流出する可能性はあります。また、供給先の販売能力次第で生産量が影響を受けることになり先を読むことが難しくなり、場合によっては余剰在庫を抱えてしまうという心配も出てきます。
供給を受ける側(供給先)としては、開発費をかけずに新しい車種のクルマを販売できる代わりに、自社の開発能力は育ちませんので、自動車メーカーとしては技術面での競争という問題が発生する可能性もあります。また、生産を供給元に任せていますので、大量に商品が必要になった時に生産が追い付かない可能性があります。
OEM車を購入する人が気を付けておきたいことは、先の話になりますが、買い替えなどでクルマを売却する際にはオリジナルのクルマと比較するとOEM車の場合には安くなる傾向があります。(稀に逆転現象が起こるようなクルマもあります。)
こんなにあるOEM車
調べてみると、意外と数が多いのに驚きますが、ここまで日本の自動車業界にはOEMが普及しているということなのですね。ここでは、代表的なOEM車について紹介しています。
日産:オッティ(供給元三菱自動車:ekワゴン)
上のクルマが日産オッティ、下のクルマが三菱ekワゴンです。特に軽自動車でのOEM供給が目立ちますね。この事例は、供給先の日産オッティのほうが、供給元の三菱ekワゴンよりも販売が好調であったという例となり、理想的なOEM車となります。
女性客などに人気の軽自動車ですが、三菱自動車の場合には多発する不祥事から企業イメージが悪くなっていた折に、日産自動車の販売力を借りたというところになります。(2018年後半には、日産自動車でとんでもないスキャンダルが発生していますが!)
トヨタ:パッソ(供給元ダイハツ:ムーブ)
トヨタのパッソはダイハツのムーブでした。ダイハツ工業は、トヨタ自動車の完全子会社となっていますので、これ以外にも多くのOEM供給があります。例えば、トヨタのピクシスバンはダイハツのハイゼットカーゴ、また、トヨタのbBはダイハツのクーなど多くのOEM供給が行われています。
ダイハツ:メビウス(供給元トヨタ:プリウスα)
今度は、トヨタが供給元となってダイハツにOEM供給している例です。よ~く、エンブレムを確認しない限り、ほとんどの人はプリウスαだと思っているでしょうが、ダイハツから発売されるとメビウスとなります。
いわゆる「デカプリ」ですが、このような人気車種がOEM供給されるのはダイハツが完全子会社であるからでしょう。ダイハツといえば軽自動車ですが、商品ラインナップをそろえるという点では理想的なOEM供給であり、人気車種のプリウスαが「ダイハツで購入すると少しお安くなりますよ」という営業トークは使えそうですね!
他にも、トヨタのカムリはダイハツではアルティスという車種名で販売されています。
他にも、スズキのアルトがマツダではキャロルとして販売されたり、同じくワゴンRはAZ-ワゴン、ハスラーはフレア・クロスオーバーとして販売されていますし、同様のケースは他の自動車メーカーでも驚くほど多くあります。
ひょっとすると、あなたの愛車もOEM供給されているのかもしれませんね?
まとめ
バブル崩壊後、失われた20年(?)といわれていた時代には、日本の主要産業である自動車メーカーでは驚くほど多くのOEM供給が行われており、現在では完全に普及しているという感じですね。
OEM車にはそれぞれメリットもデメリットもありますが、これほど普及しているところを見ると、よりメリットのほうが大きいということなのでしょう。カーシェアではあまり見かけないOEM車ですが、個人間カーシェアならあるかもしれませんね。
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