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フェード現象とベーパーロック現象
日本では2025年を目途にして、官民一体となって完全自動運転化計画が進められています。すでに自動ブレーキシステムなどは最近の新車には搭載されているものもあり、テクノロジーの進展には驚かされるばかりです。
しかし、忘れてはならないのはすべてをテクノロジー任せにできるわけではないということで、どんなに素晴らしいシステムでもブレーキが利かなくなると宝の持ち腐れとなり、かえって危険な状態を招きかねません。
2013年に多数の死傷者を出した痛ましいバス事故を忘れることはできませんが、このバス事故の原因と考えられているのがベーパーロック現象と呼ばれているものです。ここでは、忘れてはならないブレーキに潜む危険として自動車教習所ではしっつかりと勉強しているはずのベーパーロック現象と、その前段階で発生するフェード現象について再確認しておきましょう。
フェード現象とは
フェード現象とは、下り坂を走行中に急にブレーキが利かなくなることで、摩耗ブレーキを連続して使用していると発生する可能性のある現象です。
下り坂などで連続して摩耗ブレーキを使用すると、摩耗剤として使われているゴムや樹脂が過熱され、耐熱温度を超えた摩耗材が分解・ガス化し、ブレーキローとの間に入り込みガス幕が潤滑油となって摩擦係数が低下します。
摩擦係数が低下することで制動力が効かなくなると、いくらブレーキを踏んでも止まらなくなり、事故につながる危険性が高くなります。
フェード現象の対処法
フェード現象の対処法については自動車教習所でしっかり習っているのですが、もう一度再確認しておきましょう。教習所では、下り坂でのフェード現象を防ぐためには摩耗ブレーキではなくエンジンブレーキを多用することを推奨しています。記憶がよみがえってきた方も多いと思いますが、実際に運転するようになってから初めて理解できることかもしれません。
マニュアル車なら2~3速のギアで、オートマ車でも2レンジから3レンジでスピードを調整します。ブレーキべダルに頼ることなくスピード調整ができると、摩耗ブレーキが熱くなりすぎることもなくなりフェード現象を防ぐことができるようになります。
多くの方は、エンジンブレーキの多用で燃費が良くなるということは理解されているでしょうが、実は下り坂で危険性のあるフェード現象の対処法としても非常に有効なのです。いかに安全運転が大切であるかということでもありますね。
フェード現象が起きてしまったら
仮に、フェード現象が起きてしまった場合にはどうすれば良いのでしょうか?
まず慌てないことです。慌てて対処を間違うと大きな事故につながることにもなりかねません。この場合には、まずギヤをおとしてエンジンブレーキを使い、サイドブレーキを引き安全な場所にクルマを止めるようにします。
しばらくクルマを休ませて摩耗ブレーキが冷えてきたら、ブレーキが利くことを確認し今度はフェード現象が起こらないように安全運転を行います。
ベーパーロック現象とは
よく間違えるのですが、ペーパーロックではありません。ベーパーロック(vapor lock)です。
ベーパーロック現象とは、坂道や高速道路を走行中にブレーキを頻繁に使用することで、クルマの摩耗ブレーキが過熱した際に制動力を伝えるブレーキフルード(液)が沸騰し、気泡が生じることでブレーキが利かなくなる現象のことを言います。
ブレーキが利かなくなるという点ではフェード現象と同じですが、根本的な原因は異なり、フェード現象は摩耗部品の問題であるのに対して、ベーパーロック現象はブレーキフルードの問題となります。
ブレーキフルードとは、以前はブレーキオイルと呼ばれていましたが、ブレーキペダルを踏んだ力を油圧でブレーキ本体に伝える役割を持つ、自動車の重要な構成要素の一つとなります。
もう一つのベーパーロック現象の要因と考えられるのが、このブレーキフルードの劣化で、一般的な自動車に使われているグリコール系のブレーキフルードは吸湿性が高く、水分を含むと沸点が著しく下がるという特徴があります。従って、古くなったブレーキフルードはベーパーロック現象も発生しやすくなり、気泡も消えにくくなりますのでブレーキ力も回復しにくくなります。
ベーパーロック現象の対処法
ベーパーロック現象を未然に防ぐ対処法として有効な2つの方法があります。まず、ブレーキフルードの劣化が原因となる可能性があるわけですから、ブレーキフルードの定期的な交換は必須となります。車検時や1年点検などでしっかりと確認しておきたい部分です。
次に、フェード現象と同じくブレーキペダルを酷使することからベーパーロック現象も発生しますので、エンジンブレーキの多用がこのケースでも重要となっています。特に、高速道路ではブレーキペダルを頻繁に使用することは危険が伴いますので、ここでもいかに安全運転することが重要かということが理解できます。
初心者ドライバーと熟練ドライバーの最も大きな差は、このエンジンブレーキを多用するかどうかということになりますが、きちんと認識しておきたいところです。
ベーパーロック現象が起きてしまったら
仮に、ベーパーロック現象も起きてしまったらどうすれば良いのでしょうか?
まず最も重要であることは、クルマをどうやって安全に止めるかということです。例えば、坂道の場合ならフェード現象と同様にできる限りシフトダウンだけで徐々に減速していきハンドブレーキを引きながら安全に止まるようにします。ただし、それでも止まらず危険を回避できないような状況であれば、ガードレールなどにすり寄せて停止させることも頭に入れておきましょう。
カーシェアユーザーも意識したいエンジンブレーキの多様
カーシェアユーザーの中には、普段はあまりクルマを運転しないという人も多くいますから、運転中にはブレーキペダルを頻繁に使っている人も多いかもしれません。
運転経験値が増すにつれてエンジンブレーキの有効性を認識するようになると思われますが、普段からエンジンブレーキを多用することを心がけて運転するとよいでしょう。カーシェアの場合には、クルマについてはしっかりと点検・整備が行き届いていますから、マイカーに比べるとブレーキフルードの劣化などの心配はほとんどありません。
まとめ
自動車教習所では学習しているはずのフェード現象とベーパーロック現象ですが、実際に運転中に経験でもしない限りは普段それほど気にかける人もいないと思われます。普段から、安全運転を心がけて、エンジンブレーキを多用するようにし、ブレーキフルードの劣化に注意を払っていれば、予防策としては十分でしょう。
仮に発生した場合にも、慌てずにしっかりと対応できるようにしておきましょう。
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